2019年5月17日 (金)

患者さんの想いを知る(保健指導編)

糖尿病性腎症重症化予防対策として、
対象者にどのようにアプローチしたのかを振り返ってみた。


Bさんは30代の頃に健診で高血糖を指摘されたが、
その後は受診と中断を繰り返し、
50代で脳梗塞を発症し入院。

退院後の数年間は受診を拒否していたが、
外傷のため近医で加療したことを機に、
糖尿病治療中断者として受診勧奨の対象となる。

随時血糖値195mg/dl、HbA1c7.4%であった。

行政の管理栄養士が初回面談を実施したところ、
経済的理由で受診を中断したことが分かり、
また、理由を詮索されることや1回の受診に時間がかかりすぎることも
医療から遠ざかる理由であると本人が話された。
(この方の居住地から病院までは1日2往復の乗り物があるだけで、
間に合わなければ夜まで帰宅できない。)


この方へのサポートは、
①失効した保険証を復活させる手続き、
②専門医への受診をご本人に受け入れていただくこと、
を優先した。

何度か電話でお話しするうちに気持ちがほぐれてきたのか、
糖尿病に対する恐怖で受診しなかったことや、
本当は元気になって働きたいと思っていることなどを打ち明けてくださった。

それから数日後に受診を確認したと、
病院の地域連携室から伝えられた時にはホッとした。

その後の面談で、
不規則な生活で欠食も多かったBさんは、
「朝食に何か食べましょうよ。」
という提案をすんなり受け入れ、
その後はご自分から連絡してくださるようになった。

「今日は○○を食べてみた。」とか
「~まで歩いたら爽快だった。」
など変化を楽しんでいる様子を何度かお聞きした。

そして1年後には
HbA1cが6.4%にまで改善し、
現在も定期受診を続けている。

受診勧奨など
栄養士がサポートすることではない、と思われるだろうか?

対象者が自分の病気と向き合い、
よりよく生きたいと望むなら、
改善を行うためのアプローチとして、
今回の事例もまた栄養士の役割であったのだと
私自身は思っている。

”えいようさん”のHasebe

2019年4月30日 (火)

平成から令和へと時代が変わる中で ~疾病を改善する影響を与える成分が含まれる食品開発の勢いを眺めつつ~

元号が「平成」から「令和」へと変わる時間の中で、ブログを書きます。
平成の時代は、それまでよりも社会の流れも早く、様々なことがありました。。。

その中で、細谷先生から「人間栄養」と言う言葉を教えていただき、
そして「人間栄養」を実践的にするため、
こうやって考えて実践していくバトンを受けたのも「平成」の間のことです。

少し話を変えます。
日本には平成30年4月に施行された「臨床研究法」という法律があります。
新薬開発の際の臨床試験を行う際に、
そのモニタリング・監査の実施、企業からの資金提供などへの管理等に対し、
法による規制が入ることになったものです。

この法規制は、ある高血圧治療薬の臨床試験時の不正問題等が社会に明るみに出て、
国民の信頼を大きく損ねてしまったことなどの社会問題がきっかけとなったと言われています。

施行から1年経ったところで、内々ですが現状を聞く機会がありました。
新薬開発には臨床試験でも、今以上にお金も手間がかかることは、
この法律施行時にも言われていたことかもしれません。
さらに、
対象が、「薬」以外にも、「疾病に対し改善効果を狙った食品」の臨床試験に対しても及ぶらしい?ということだそうです。
ただしこの判断は、まだ都道府県間でも曖昧らしく、いろいろな事例が出てくると形になってくるのかもしれないし、
わざと曖昧なままにしておくのかもしれませんね。

つまり結果として、
コストをあまりかけずに、
「健康的」を訴求する食品を開発しようとすると、
企業としては、この法律の規制対象にならないように、
「疾病ではない」人々に対する「食品」を開発することになりますよね。

機能性を持つ食品の開発は、この法律の施行に伴い、更に魅力的な市場に見えるようになるのかもしれません。
しかし、既に飽和状態に近づいているとの噂もチラホラ出ていることも、耳にします。

さて、人間栄養の考え方からしたら、あまりにも健康訴求の食品の情報だらけで、
人々を振り回さないで欲しいなぁと思いますが、社会の流れはそちらの方向へ動いています。

そんな時に、私たちは、人々にどんな言葉をかけてさしあげられるのでしょうか。
単に、人々のヘルスリテラシーを上げればよいなどと、言いきれるほど容易いことではないと思います。

「平成」から「令和」に変わるこの時に、
「すでに起こった未来」から1つ問題提起させていただきました。
この先は、私たちの行動で変えることができる未来なのだと思います。

”えいようさん”のゆうさん

 

2019年4月21日 (日)

『人間栄養』を改めて考える

久しぶりに細谷憲政先生の著書「人間栄養の実際-栄養状態と食事-」を開きました。

人間栄養学の目標・目的は、人体の栄養状態nutritional status を改善していくことです。
 「人間栄養の実際-栄養状態と食事-」細谷憲政 著(2008年) P16


私達が、多くの方々に知っていただきたいと思っている
『人間栄養』とはどういうことなのか、
一つの考えがこの著書に既に書かれているのです。

このためには、人体の栄養状態を評価・判定nutritional assessment することが必要になります。
この結果に基づいて、栄養状態を改善するためには、
どのようなケアプランcare planを立てて、
効果的な栄養補給nutrition support (中略)を選択し、活用して、

傷病者に対応して行くことになります。このような場合、有効な栄養教育も併せて
実施していくことになります。“  

細谷先生の言葉は続きます。
この著書では、臨床栄養の実践活動について、
栄養士・管理栄養士が行うこととして書かれてありましたので
“傷病者”とありますが、
健康状態がよい方々も含めて、考え方は同じです。


『人間栄養』は「栄養状態」、
ひいては「健康状態」を改善して
生活の質=人生の質(QOL;Quality of life)を向上することにつなげる取り組みですが、
『人間栄養』を実践の中に取り入れるには
細谷先生の言葉の行間を、もう少し読み解いて行きたいとおもいます。


「栄養状態」は、
人体に必要な「栄養素摂取」が
欠乏-潜在的な欠乏-適正範囲-潜在的な過剰-過剰の中で流動的に動き、
たとえ同一人物であっても、同じ状態ではなく流動的に変化しています。
だから、
栄養士・管理栄養士は、対象者の「栄養状態」を「評価・判定すること」は、
一度だけではなく定期的に継続して行う必要があるのです。

また、『人間栄養』の考え方を用いて、対象者の方とお話しする際には、
「栄養素」や「栄養成分」レベルで対話をするよりも、
対象者が食生活の中で用いるレベル、すなわち「食品」や「食べ物」、「食事」で考えることが必要です。

加えて、「栄養素」や「栄養成分」は、
食品成分表の数値どおり、栄養代謝の理論どおりに
いつも同条件で同じように、作用、代謝されるものではないのです。

つまり、対象者に生じている事象を観察、把握することで、
この流動的な「食の営み」の中での
「栄養状態」を総合的に評価・判定することになるのです。

さらに、「いつ食べるのか」、「どんな組み合わせがよいのか」、「なぜ食べるのか」、
「何をして過ごしているか」、「身体の動かす程度」、
ひいては、それらに関わる対象者の「意向」、「信念」などの”想い“をも含めた
対象者の生活そのものを受けとめ、それらから生じている事象との関連を
見ていくという視点が必要だということです。

そして、
『人間栄養』の目標・目的は「栄養改善をして行くこと」ですが、
多くの人々は1度で何もかも改善することは難しいので、
段階的な「改善のための計画」を立てて、対象者が自発的に取り組んで行く、
栄養士・管理栄養士はその取り組みがうまく実施できるようサポートして行く、
両者共同の取り組みであるということを理解することが重要です。

これら一連の取り組みが『人間栄養』だと思います。
取り組みの枠組みは、これまでの「栄養素」、「栄養成分」の過不足だけの評価や
対象者の意向も確認せず、理想的な食事に当てはめるフォローの仕方と同じであるけれど、
その心構えとして、「人間」そのものの当たり前の姿をとらえてアプローチするという点で
違いがあるのではないでしょうか。

ここでは栄養士・管理栄養士と書きましたが、
健康に関する“想い”を持つ人々に関わる支援者すべてを対象として
『人間栄養』は広く受け入れて行ける取り組みだと思います。

健康でありたい、若々しくいたい、やせたい、病気を悪くしたくない、
足腰を弱らせず年を重ねたい・・・
『人間栄養』の考え方を実践して、「人体の栄養状態を改善して行く」ことができると
私達の目の前に訪れる対象者が持っているこれらの“想い”を実現することに
役立つのではないかと思います。


”えいようさん”のミッシー

 

2019年4月 8日 (月)

患者さんの想いを知る(給食業務編)

給食運営は、栄養面だけでなく、安全、効率性などが求められる。
さらに、病院食は治療食という制約があり、どうしても画一的なメニューになりがちである。
それでも現在は、入院中でも個人の嗜好や食生活を把握し、
その人らしく療養できるよう個人対応など工夫がなされている。

人間栄養について考える時、
疼痛コントロールのために緩和ケア病棟に入院された少し気難しそうな印象のAさんを思い出す。


Aさんは、治療が奏功し、痛みが軽減し、ご自宅への退院が決定したが、
看護師から、「食事が心配で、退院できない」と不機嫌でだと連絡があった。

不機嫌のきっかけは、
数日前、Aさんが担当栄養士に、
「食事に、牛乳が毎日出るけれど、牛乳が好きでないので、どうしたらよいか?」と聞いたところ、
「いつでも、ヨーグルトや、ジュースに変更して提供できますよ」と言ったという。


「牛乳でなくても良いなら、何故、毎日、食事に牛乳を出す必要があるのか?
家ではどうすればよいんだ?」
と、混乱して、イライラがつのったようである。

後日、私は面接で知らされるのだが、
Aさんは、「毎日牛乳が出るのは、きっと自分の病気には、牛乳が必要なのだろう。
牛乳はあまり好きではないが、家に帰ったら、毎日、飲まねばならない。
自分は2階の自室で療養し、庭を眺め、ゆっくりしたい。
しかし、妻も歳を取り、足が悪く、食事の他に、2階まで、毎日牛乳を運ばせるのは、かわいそう」と悩まれていた。

昔気質のAさんは、奥様のことが心配であると、担当栄養士に話せなかったようである。
栄養士も、気難しい患者さんの機嫌を損ねないようにと、
病院食でも融通が利くとことを真っ先に伝えたとのことだった。

Aさんが混乱したことへ、栄養士はリカバリーを試みることとした。
そう、私は、患者さんと再び面接を行った。

Aさんには、病院食の提供の仕組みとして、
牛乳を優先して提供していること、
牛乳に含まれる栄養素について説明し、
牛乳以外の乳製品やチーズでも、蛋白質を十分に摂取できることをお話した。

少し安心されたのか、
Aさんは、Aさんが最も心配している奥様の様子や
お子様からの今後のサポート状況などを話してくださった。

自宅に小さな冷蔵庫を購入できそうとのことだったので、
息子さんに買い物の手助けと、2階までの運搬をお願いすることにした。

Aさんは、数日後に退院された。

タイミングを逸せず、
対象者の想いの把握に十分気配りし、
納得できる答えを返すことの大切さを教えていただいた事例だった。

 

  ”えいようさん”の恵

 

2019年3月20日 (水)

人の気持ちを動かす

人の気持ちは人に言われても動かない


だから、まず対象者の良いことだけに集中する
前向きに、否定的にならず、良い行動を見つけることだけに集中して、褒める


「褒める」ことは上からものを言う評価ではない

よい習慣や心がけ、行動、たとえ始めたばかりでも
対象者のよい行動を素直に褒める

褒めることは、時に、慎重に憶病になるが、
対象者の心がほぐれ、やる気につながる
双方の距離もぐっと縮まる


人は何かを変えようとする時
よくも悪くも感情がやる気に大きな影響を与える
だから褒め方上手のくふうが大事


何かを変えようとしてもなかなか達成まで難しいこともある
けれど、食事や日常生活の中でできる小さなことを繰り返していけば
心も身体もよりよくなっていく


できるだけ食事や生活を大きく変えなくても
対象者の変えたい[願い]につながることを見極めるのはこちらのつとめ
変えたい[願い]を心に、少しだけ丁寧に日常生活を送るのは対象者のつとめ

双方の力を合わせてよりよい未来を創る

健康への取り組みにはおそらくゴールはない

健康を願うなら試行錯誤し続けるのは本人のつとめだけれど
知らないことを知る、考え方が柔軟になる、納得する


そんな関りが思わず人の気持ちを動かすことがある
"えいようさん”の伸助

«「アレンジ"力"」というスキル